第10章 名前を呼んで
中也さんの言葉に頭の中が真っ白になった。
『……え?それって私が悪い…ん、あれ、ていうか中也さんの私贔屓なんじゃ』
「俺以外にもそう思う奴らがいるからこういう事になんだろが。俺以外から無理矢理されかけた事あるだろ…つかそれに限らずともケーキバイキングで他の客からケーキ食べさせられてファンサイトまで作られる奴とかいねえよ」
『で、でも私こんな見た目で、ただでさえ子供なのにもっと子供に見られるような奴ですよ?』
「そう見える奴ばかりじゃねえからそういう対象にされんだろ……お前さっきの奴の驚きっぷり覚えてねえのか?身長が低くて童顔な高校生くらいと思ってたとか言ってただろが」
事情聴取で聞いたとんでもない発言。
そう、その通り。
さっきの男の人は、あろうことか私の事を高校生だなんて思っていたらしいのだ。
いや、でも高校生だからってあんな事する?普通。
『なんでそんな歳に見られたんだろ、そっちの方が珍しい』
「初見じゃだいたい大人びて見えんだよ、綺麗な上に落ち着いてっし雰囲気あるからなやっぱり。……あとその、あれだ」
あれ?と返すと察しろ!!といきなり焦り始める中也さんに、なんなんですかと言い返す。
あれって言われて気付く方がおかしいですよ、察しろとか無理でしょ。
すると中也さんは腰を屈めて、私の耳元でコソリとあれなるものを言い放った。
擽ったさや恥ずかしさも勿論あったのだけれど、何よりも問題だったのはその中身の方だ。
「……胸のサイズ」
『………………へ、ッ…変態!!!』
「俺じゃねえよ!!!」
気にしてるのに、小さいの付けてちょっとでも誤魔化そうとしてるのに!!
なんで中也さんといいトウェインといいそういうとこばっか見てるのよ、信じらんない!!
『ひ、人が気にしてることをそうやって…ッ!』
「お前それ気にしてたのか!?どっちかっつうとステータスみてえなもん……悪い、いやすんません、今のは世間一般の奴らの言い分で」
『成長期の女の子になんて事言ってんのよ成人!!!』
「…成長期……だと……」
中也さんは何かショックを受けたような表情でピシャリと固まって、何故だか妙に真顔になる。
異様な光景なはずなのに物凄くかっこいい顔して真剣な表情で何かを考えているものだから、ついこちらの勢いも弱くなった。
「…つまりまだこの先が『中也さん最低』」