第10章 名前を呼んで
『もー…第一私の能力なんて見たってなんにも面白くなんてないし。中也さんのやつの方がどう見たってかっこいいのに』
「お?嬉しいこと言ってくれんじゃねえか」
『うん、一部除いてね?一部』
一部?と顔を顰める中也さんにジロリと目を向けてフイ、と逸らす。
まあ思いつかないくらいがいいや、本人の中でも今回結構嫌な思い出になっちゃっただろうし。
なんて考えて目が冷たくなってしまったのがいけなかった。
「ああ…あれはよっぽどの事でもねえ限りもう使わねえよ」
『!わ、分かってるならいいです…』
もう外なはずなのに、またあの顔…いったいどれだけ私の胸をうるさくすれば気が済むのだろうか、この人は。
磯貝君の運んでくれたパフェに手を付けて、無心でパクパクと食べ進める。
するとなんだかジィッと視線を感じて、そちらを恐る恐る見てみると、やはり皆からの目線が。
『……何』
「いや、蝶ちゃんの能力気になってさ!」
「そうそう、異能って結構憧れるものだもんやっぱり!」
キラキラとした目を向けられる。
こればかりはやはり慣れたものじゃない。
私の能力なんて応用がききすぎて挙げていったらキリがない上、これは異能力ではないのだから。
異能力というものには憧れを持っても、それが異能でなく、更には体質でさえもがおかしいと人が知ったら…いったいどのように思われるだろうか。
答えは至極単純だ、人外の類だと思われる。
この世界には異能力というもの以外にこの力を説明できる言葉が無い。
魔法も無ければ科学技術が異常発達しているわけでもないこんなところで、言葉に表しようのないこれをどうやって説明すればいい?
……ごめんなさい、ちょっとだけ嘘、吐かせてよ。
『…説明できそうなやつだけね』
そう前置きを入れてから、カルマ君に説明した時のように、皆のテーブルに置かれた食器を空中に浮かせてみたり、入れ替えたりしてみる。
「うお!?カップが…!?」
「え、さっきこれ矢田さんのとこにあったやつだよね!?」
やはりこれだけでもかなり混乱している様子。
それはそうだろう、怪奇現象か何かにしか見えないようなものなのだから。
『とりあえず移動能力だけね』
私が存在を認識しているものであれば、集中度合いによってはどんなものでも移し変えることが出来る力。
これくらいなら、説明しても大丈夫