第10章 名前を呼んで
「!じゃなくって、今の何!?蝶ちゃんと中原さんだったから最早何しても平然と受け入れちゃってたよ!!?」
カエデちゃんの一言に皆ハッとして、私は拗ねたように中也さんにくっ付いていた。
『ふふ、参った?中也さん。流石の中也さんでもね、私ならこういう解決法が使えるんですよ』
「まさかもう対抗策を考えつくだなんて流石蝶…実は半分は俺にくっつきたかったって魂胆は丸見えだがな?可愛い可愛い蝶さんよ?」
『な、ッ…!!?』
異能でくるりと体を動かされて、上手い具合に中也さんに横抱きにされてしまった。
ていうか何してんのこの人、今更だけどこんな人前で可愛いとかお姫様抱っことか!!
「……大人しくしてろ、お前一応今片脚骨折れてんだ。そろそろキツかったろ」
ポソリと耳に届いた中也さんの声にピタリと大人しくして、そのまま中也さんに席まで運ばれた。
今日は外に出る前に固定具は外して、壁で代用させてきた。
それにそろそろ中の骨もヒビ程度にはなってるだろうからと思っていたのだけれど…彼の言う通り、少しグラつき出していた面も否めない。
それで今日は電車も真っ先に席取りに行ったのか、と普段の中也さんからイメージの湧かない光景を思い出して、やっぱり親バカじゃんかと心の中で呟いた。
『…あ、りがとう……ございます』
「どういたしまして、お姫さん」
『~~〜ッ、もうやだ何なの今日、いつにも増して頭おかしい中也さんっ!!』
「また頭おかしいってお前…「中也さん中也さん」ああ!?何だカルマ……ってどうしたんだよ手前ら?」
中也さんの雰囲気が変わったのが気になって皆の方を向くと、ジィッとこちらに目線が送られていることに気が付いた。
「いやね?俺は知ってたからいいんだけどさ、皆二人の能力見んの初めてだったから戸惑っちゃってんだよ」
『!…中也さんなんで使わせるような事するんです!?折角隠してきてたのにこれだと暗殺計画立てない理由がバレちゃうじゃないですか!!!』
「お前が武装探偵社の社員だって割れた時点で全員理解してんだろ」
中也さんの言葉に勢いが止まった。
クルリとカルマ君の顔を見ると、キョトンと首を傾げられる。
悪気のない瞳にこそ悪意を感じるのだけれど、今回のは本当に何も知らないといった目だ。
「蝶ちゃんがやると容赦ないもんね」
『言わなくていいから!!!』