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第10章 名前を呼んで


「はい、ストレートで良かったよね?…落ち着いた?」

顔を上げて紅茶を運んできてくれた磯貝君に小さく頷いて、ありがとうとお礼を言う。

私、本当に帰ってこれたんだ。
ちゃんと中学生のままなんだ。

『……ッ、最近涙腺おかしくなっちゃってる…ごめんなさい、すぐに収まるか……っ』

手の甲でいっぱいいっぱい拭っていると、カルマ君に手を止められて、涙を優しく拭われた。

「いいよ、そんな焦らなくて。とりあえず折角また会えたんだし…おかえりなさい、蝶ちゃん」

『!……た、だいま…ッ』

私の返事に続くように、カルマ君に続いて口々に聞こえるおかえりという言葉。
横浜の人達とは違って、皆には本当にもう会えなくなるかもしれなかった。

同年代となる友達と……私の初めての友達と。
六歳なんかになっちゃったら、きっとこんな風には笑い会えてなかった。

「んでまあ蝶ちゃん…蝶ちゃんが俺の事大好きなのはよく分かるんだけどさ、そろそろ俺に命の危険が迫ってきてるんだよね」

カルマ君に指で促された方向をちらりと見ると、明らかに不機嫌そうなオーラを漂わせている中也さん。
それを見てちょっといじめたくなってきて、カルマ君の方に向き直る。

『いいもん、食べる量の事ばっかり気にして牛扱いする人なんて知りませ……ッ!?ち、中也さんこれずるい!!ずるいってば!!』

刹那、フワリと浮かび上がる体。
それも私の反応を面白がるようにして上下左右にゆっくりと動かされ、どう動くのかも分からないような事態に頭が混乱し始める。

「はっ、知らねえらしいなら仕方ねえ。これで思い出せるか?」

『お、大人気な…きゃッ!!?……〜~〜ッ、!!!』

「んな!?蝶、お前いつの間に背中に…っ」

瞬間移動で中也さんの背中に移動して、首元に両腕を回す。
確かに中也さんの異能のせいで私の体はどこに移動しても好き放題に動かされてしまう。

だけどこうして中也さんに捕まってしまえば、彼は自分の身体を動かしてまで私を使って遊ばなくなる。
私だって馬鹿じゃないし、それに中也さんが相手なら___

『……ッ、こればっかりする中也さん嫌い』

「!!!?わ、悪かった、俺が悪かった!!そうだよな、しょうもない事に驚く俺が馬鹿だったんだ、そうだそうだ」

___こんな具合にすぐに異能を解除してくれる。

「「「いいようにされてんなぁ…」」」
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