第10章 名前を呼んで
異能特務課が揉み消せていなかったゴシップ記事が今朝出たらしく、そこには昨日の写真がでかでかと載せられている。
モビーディックや敦さん、芥川さんの写真まで載っていて、探偵社とポートマフィアが揃って組合を倒しに行ったと、その通りではあるのだけれど少し良さげに書かれている。
それはいい。
問題はそこじゃない。
谷崎さんから送られてきた画像を中也さんに見せると、その瞬間にブッ!!!と彼も吹き出した。
「な、なんでこんな写真がッ…異能特務課は何してやがった!!?」
やはり私と同じような反応を見せている。
それもそのはず、載せられていた写真と記事に書かれた内容は、私の事を特定するような内容だったのだから。
「ね、ネットで話題の白石蝶、組合討伐に大貢献……ってそうだよ!!だったら何か文句あんのかこの野郎!!?」
画面にキレ始める中也さんだが、今回ばかりは仕方が無い。
ウエディングドレスだなんて目立つ格好で甲板や制御室にいたから見えてしまったんだろう。
逆光と距離のおかげで黒く写っているのだけれど、どうやら私の方は敦さんがいた上にあの場を目撃していた人々によって情報が漏れてしまったらしい。
あの会員サイトかと二人して顔を青くするも、まあ嫌な書かれ方をしているわけではない上、どちらかというと武装探偵社員としての功績を称えるようなものであったから、まあ仕方ないかと無理矢理納得する。
「……今日、後で坂口の野郎にクレーム入れてくる」
『い、いや、多分安吾さんこれから徹夜続きになるから勘弁してあげ……!歓迎会?』
谷崎さんからのメールの続きを読んでいると、最後の方に気になる文章が書かれていた。
その内容は、鏡花ちゃんの入社祝いで歓迎会をするというもの。
ああそっか、そういえば恒例だったなぁ…なんて思いつつ中也さんの方を向いて、今日の夜の予定を聞く。
「夜…はまあ、特に何も用事ねえけど?」
『……あ、あの…鏡花ちゃんの歓迎会、行ってきてもいい?』
「そんなもんに気使ってどうすんだよお前…行ってこい、それなら首領と姐さんとの祝杯も今晩上げることにすっから」
中也さんの返答に笑顔でうん、と答えた。
今日は折角遠出をするんだし、お土産にケーキもいっぱい買って帰ろう。
久しぶりに中也さんに髪を結んでもらってから、扉を作って拠点の外に移動した。