第10章 名前を呼んで
中也さんの執務室に戻ってきて、中也さんは身支度を整える。
結局行き先は、以前カエデちゃんから教えてもらったスイーツ屋さんを巡るために東京に行くことに。
中也さんは車で行きたかったそうだけれど、万が一拠点に戻らなければならなくなった時に車を放置していくわけにもいかないため、電車で移動する事にした。
『……わっ!?通知数…え、何これ全部学校!?』
殺せんせーが届けてくれた荷物の中から携帯を取り出して電源を入れると、夥しい通知が入っている。
その中の全てがクラスの皆からの連絡で、大丈夫か、もう無事に帰れたかと心配してくれているものばかりだった。
グループの方じゃなくて私個人に当てて毎日のように送られてきてる…これは中也さんあたりが何か言ったかな。
「蝶?どうした、そんな声出して」
『す、すっごい通知が…』
画面を見せると流石の中也さんでも苦笑いになった。
「あー…あいつらも相当心配してたからな。……あ、あとすまねえ、異能の事まで話してるみてえだったし状況が状況だったから、お前が武装探偵社の社員だってことあいつらにバラした」
『ああ……私も中也さんがポートマフィアの幹部さんだってバラしましたよそういえば』
「お、その様子だと心配してたような反応じゃあなかったんだな?よかったじゃねえか」
通知に入ってきている皆の様子からしてみて、私が変な能力を持っているとかそんな事は関係なしに、私というものを心配して大切な仲間と思ってくれているのだなと強く感じ取った。
私自身、探偵社に憧れを持っていた子を実際に見もしたし、体質の話までは流石に中也さんもしていないだろうから平気だ。
と、通知を漁っていってる内に、メールが入っている事に気が付いた。
メールの送り主はたった一人で、それも今日送られてきたばかりのもの。
谷崎さんからのものだった。
『今日何か用事あったっけ私……って、ん?』
白黒画像が添付されていて、何かと思ってそれをタップして拡大した途端に、私の思考は停止した。
……嘘でしょ。
突然固まった私に中也さんが今度はなんだと声をかける。
しかしこんなものを見せられてしまっては、叫ばずにもいられないだろう。
『ちっ、ちゃんとお仕事してよ異能特務課ああああああ!!!!!』
「うおお!?なんだなんだ!!?」
添付されていたのは昨日のゴシップ記事だった。