第10章 名前を呼んで
「昨日仕事片付けといたから今日は俺もゆっくり出来るしな、お前の体調が良いんなら遠出してもいいぞ」
『する!します!!』
私の食いつきがいつもよりも凄いからか、再び呆然となる立原と樋口さん。
撫でられる上に中也さんから本当のデートのお誘いをされて上機嫌になる私を、首領は微笑ましそうに眺めている。
「昨日ちゃんと休んだ甲斐あったな、確かに元気そうだ…」
『中也さんとデート…ッ、ねえ、どこ行く?何食べるっ?』
「プッ、言うと思った。何でも言え、詫びも兼ねてめいいっぱい今日は甘やかしてやる」
中也さんの言葉にやったあ!!と抱き着いて、ようやくいつもの調子になれた。
今日は気になってた色んなお店でいっぱい甘い物を食べよう。
それで中也さんが気に入るようなものが見つかったらまた作れるように味を盗んで帰ろう。
甘い物を食べる目的を自分の中で再確認しながら、中也さんの手に擦り寄った。
幸せオーラ全開で頭の中はもう完全にお花畑だ。
「え、っと…?仲直りしたんなら、良かった……のか?」
「え、えらく嬉しそうね蝶ちゃん…?デートは結構してなかった……?」
「ああ、まだ私しか知らなかったか。この二人、昨日から遂に交際を初めたらしいのだよ」
首領の声も無視して中也さんにくっついていると、立原と樋口さんの顔がピシッと固まった。
「こ、ここ、交際…?ってつまり……あれっすか?え、あれだよな」
「お、おおお付き合い…ッ!そうですよね!!?」
二人がバッと私の方に目を向けて、それに気付いて首を傾げてそちらに振り向けば、物凄い勢いで感涙された。
「「や…ッ、やっとくっついたああああ!!!!!」」
『!!?』
二人の勢いに圧倒されて肩を跳ねさせれば、二人共同じような顔で私を凝視する。
「蝶、おめでとう!!本当に!!お前あんだけ悩みまくって待ってたもんなあ!!!」
「おい」
「おめでとうございます!辛かったでしょう!?あんなにずっと我慢して…っ、こういう事に関してだけ奥手な中原さん相手によく耐えたわ蝶ちゃん!!今度また何かあったらいつでも相談しに来てね!!」
「手前ら…っ」
立原も樋口さんも、言う事はやはり太宰さんや首領と同じだった。
それになんだかおかしくなって、それでも余計に嬉しくなって、自然と笑みをこぼす。
皆知ってた、元から私達が両想いだった事。