第10章 名前を呼んで
『〜〜〜〜!!!?』
声にならない声を上げて、口をパクパクさせて覆いかぶさってきた中也さんを見る。
え、何何、なんで今私中也さんにこんな見られてるの。
グルグルする頭で必死に考えていると蝶、と呼ばれ、それに異常に反応してはいッ!!?と肩を跳ねあげる。
『な、んですか…っ?』
「いや、なんですかじゃなくって…横んなって照明消すんじゃねえのかと」
フイ、と私から少し目を背けた中也さんに私の方も合わせてバッと横を向く。
『し、照明!そうですね、いつ寝ても大丈夫なようにしてから…!!』
ダメだ、寝るとか言うだけでもかなりくる。
ていうかそれもこれも全部かっこいち中也さんが悪い。
何なのこの人、私が離れてた間に前よりも身体がしっかりしてるのにすらっとしてて…なんていうか、たまに見える首筋とか鎖骨とか筋肉の付き具合とかが特に……
『…………ッ、目に悪い…』
「あ?なんか言ったか」
『な、なんにも!!!』
ベストもタイもチョーカーも手袋も外していて、シャツだけとなった中也さんを直視するのに耐えられない。
両手をギュッと握って胸元と口元を隠すようにに当て、脚を内向きに少し強めに閉じる。
縮こまるような姿勢になって顔を背けて、それでも恥ずかしさにどうにかなってしまいそうだ。
なんとか冷静さを保とうと顔の熱が冷めるよう深呼吸していると、部屋の証明がゆっくりと暗くなっていき、橙色のベッドライトが薄らと灯るだけになる。
そこまでいってようやく中也さんが移動するのかと思った。
けれど、隣に移動するのではという私の予想とは裏腹に、中也さんは再び私に目線を向けて、サラリと髪に手櫛を通すように頭を撫でる。
それになんだかゾワゾワしたのとびっくりしたのとで、また肩をビクつかせた。
すると私が驚いたのが分かったのか何なのか、中也さんの手がピタリと止まって、今度は私の左頬にそっと添えられる。
『…ひゃ、……ぅ』
「……なあ、お前もしかして、かなり耐性弱まってっか?」
中也さんに図星を刺されてビクリと肩を揺らすと、それだけでもう確信を持たれたのだろうか。
中也さんの顔がほんの数センチのところまで迫ってきて、目が逸らせなくなった。
「ちと可愛すぎやしませんかね蝶さんよ…んな恥ずかしがってちゃあキスもなんも出来ねえぞ?お前が言うに俺はキス魔だそうだが」