第10章 名前を呼んで
ニコリと笑えば二人共本気で焦っていたようで、ホッとされた。
首領はともかく、なんで中也さんまで。
ていうかこの人私にプロポーズしたって言ってたよね?ね?
「…んな顔すんなって。結婚はいいとして、お前今まだ十四だろ?せめて成人してからにしとけ、その方がいい」
『そんな事言ってる内に他の人のとこに行「かねえっつの」…なんで成人?私、十六になれば出来るんでしょう?』
「ん?あれ、君達なんで今そんな結婚の話なんて…え?」
きょとんとする首領をよそに、むくれる私にプッと笑って、よしよしと頭を撫でる中也さん。
「焦んなって、その方がお前の身が軽いからだよ。焦ってんな事考えねえでいいし…それに今のお前の花嫁衣装は見れたんだ。後はまた、大人んなってから見れれば俺はかなり満足なんだが」
『何それ、未来の…というか前の私の事ばっか褒めて。中也さん実はそこがタイプなんでしょ』
「あ?まあ、もろドストライクだな」
ニヤリとする中也さんからバッと顔を背ける。
何、ドストライクとか初耳なんですが。
ていうか首領の前でよくそんなこと言えるなこの人。
「あーあー、んな恥ずかしがんなって」
『は、恥ずかしがってない…』
「嘘つけ意地っ張り。あと地味に自分に嫉妬すんな…言ったら絵面がやべえ事になるから言わなかっただけで、今のお前も十分俺のタイプだよ。つか段々俺好みに成長していってんだから、このままいった先がもっと楽しみだ」
「あ、あの?二人共…?」
首領の声に私も中也さんも揃ってそちらに顔を向ける。
中也さんの台詞が恥ずかしすぎて今それどころじゃなかったけど、首領の話を聞かないわけにもいかない。
「なんていうかその…何かあった?」
首領の問いにキョトンとして、それから自然と頬が緩んだ。
『えへへ、中也さんからプロポーズされました』
「蝶!?言い方ってもんが…『違うの?』すんません、それでいいっス」
よろしいですと返すと、今度はまた首領が目を丸くする。
「お…おおおおお!!おめでとう蝶ちゃん!!ごめんねぇ、中原君が奥手だったせいでずっと辛かったろう!!今度いっぱいケーキあげる!」
「ぐ、ッ…否定出来ねえのがすっげえ悔しい」
『本当ですか!?ありがとうございます!!』
首領の言葉に顔を真っ赤にさせて少し涙目になる中也さんがなんだか可愛く見えた。