第10章 名前を呼んで
『あ、だけど私こんな格好…結局元の服どこいったんだろ』
「元の服って……ああ、もしかして仕事服かい?」
何故だかピタリと言い当てた首領に目を丸くしてそちらを見ると、いやね?と言いながら話を続けられる。
「今朝立原君宛てに荷物が届いていて、中に綺麗にされた中原君のとよく似た女の子の服が入っていたんだよ。雰囲気とサイズからしてみて蝶ちゃんのなら有り得るなって事で、僕の執務室においてあって…」
『綺麗にされた…?』
クリーニングされたように綺麗になっていて、シワ一つ付いていない状態で綺麗に折りたたまれ、ビニールに包まれて届いたらしい。
クリーニングと聞いてルーシーさんの顔が思い浮かび、そこから立原宛てということでトウェインさんの顔が浮かんでくる。
もしかして最初から、私をここに返すつもりだった…?
考えるが早いか、扉を作ってトウェインさんのもとに繋げ、横になったまま扉を開けた。
突然の訪問に向こうは勿論、首領も中也さんもびっくりしていて、声も出せていない様子。
繋がった先は病院で、ああ、フランシスさんのところかと一人納得し、トウェインさんの顔を見て言った。
『服、わざわざありがと……それだけ』
「いやいやいやいや、唐突すぎない蝶ちゃん!?僕今日二回目の突然の蝶ちゃんの登場に心臓止まりそうになったんだけど」
『?服送ってくれたの、どうせトウェインさんだったんでしょう?』
「そうだけどね?ってバレてる…!?」
変わらない様子のトウェインさんに少しだけ安心して微笑んでから、うん、と続ける。
『だからね、ありがとう。今携帯持ってなかったから…じゃあまたね』
手を小さく振ると、少ししてからトウェインさんも微笑んで、手を振り返してくれた。
病院の中で他の人にこんな能力見せられないから、ゆっくり、けれどもすぐに、扉を閉めて消してしまう。
そして呆然とする二人に顔を向けて、そういえば、とまたもや思い出した事を口にした。
『私、南の島で荷物置いてきちゃって……って、中也さん中身見た!?探った!!?』
「あ!?い、いや、探ってねえけど!?つか探ろうとしたら女共に止められて…」
『よ、かった……あ、でもあれがないんじゃ元も子もないかぁ』
ガックリと項垂れていると、首領の携帯に一本の着信が入る。
「誰だ?こんな時間…!しかも私用の携帯に?」