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第9章 天からの贈り物


これに気付いちまえばもう怖くねえ。

「なあ、なにが兄だ?おい、こちとら親だが文句あっか?ああ?」

「チッ、気付かれたか…」

「何が気付かれたかだよ手前ッ、知ってて言わせようとしやがっただろ!?ああもうやってらんねえ!!仕事終わったんなら帰んぞ蝶!」

未だ俺に抱きついたままの蝶の肩に手を置くと、嫌だと言わんばかりに離れようとしねえこいつ。
可愛い……じゃねえよ俺。

「蝶?おい、帰らねえのか…って、おい?」

『ん…ちょっと、疲れちゃった……ゼリー買って首領のとこ、行く』

本人の口から疲れただなんて言葉が出てくるのは珍しい事だ。
普段なら意地でもんな事教えてくれねえこいつが口にするとは。

俺に体重をかけてくる蝶を軽く受け止めながら、今日こいつがどれだけの規模の壁を作っていたのかを思い出してハッとする。

それだけじゃねえ、ただでさえ脚だって折ってるくせして今俺に抱きついてきてたんだ、こいつどんだけ意地っ張りなんだよ。

蝶を横抱きにして抱え、異能で自分の分のパソコンを持ち上げる。
俺の突然の行動に探偵社の奴らは驚いていたが、誰も止めようとはしなかった。

「お前、そういうのは先に言え…手遅れになったらどうすんだ…っ」

『嬉しかった、から……』

ヘラリと笑う蝶に何も返せなくなって、太宰の方に顔を向ける。

「ん?…ああ、そういう事。大丈夫だよ、蝶ちゃんが壁を張ることは予測していたから、探偵社の冷蔵庫にちゃんと……ああほら、あった」

太宰は小さめの冷蔵庫から三カップほどのゼリーを取り出し、袋に入れて俺の指にかける。

「こういう時は気が利くぜ…味は」

「白桃でいいんだろう?」

「はっ、分かってんじゃねえか…蝶、とりあえず首領んとこまで頼めるか」

かなりしんどいのだろうか、返事は帰ってこず、すぐ目の前に白い扉が現れる。
恐らくここを通れば、首領のところに行けるはずだ。

これから数日はゆっくり出来るだろうから、恐らく今回は鉄分補給のみで、こいつの身体に針は刺さずに済む。

「手前ら、悪いがこいつはもう連れて行く。気になる事は太宰の木偶に聞け、こいつなら大概のことは知ってっから」

「中也、君、サプリは持っているのかい?」

「当たり前だろ、今も三袋は常備してる」

「流石親バカ」

太宰が扉を開け、そこからポートマフィアの拠点の中に入っていった。
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