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第9章 天からの贈り物


「んで?蝶がえらくまた甘えてきちまってるが…試験っつーのはなんだよいったい」

「ふふ、君が相手だからねえ…試験内容も人よりずっと特別なものさ!」

出やがった、糞太宰の満面の笑顔。
これはかなりの覚悟をしておかねえと、恐らく突破する以前にメンタルが持たなくなっちまう。

そんな考えで身構えていたものだから、次に続けられた一言に間抜けな声をあげることになる。

「私に向かって頭を下げて、義兄さん、蝶さんを俺に下さいって言うんだよ……簡単でしょう?」

簡単、確かに簡単なことだ。
ただし、やはり相手はこの太宰。
俺にとって一番ハードルの高いもんをぶつけてきやがった。

「は…?おい、待て待て、流石にそりゃ内容が特別すぎんだろ。つかなんで手前が義兄なんだよ気持ち悪ぃ」

「蝶ちゃんの義兄さんといったら私だろう。プロポーズまでしたんだ、親族に許可を取るのは普通の事だろう」

勝ち誇ったような笑みで上から見下してくる青鯖に口角を引き攣らせながら、顔に青筋を浮かべる。
他の社員共は面白がっているのか、腹を抱えている奴ばかり。

なんだこれは。
マジで俺が相手だからってふざけすぎてんだろ。

「つか待てよ、蝶の兄貴分っつったらどう考えても手前じゃなくて織田の方だろうが。なんでそこで手前なんぞがしゃしゃり出てきやがんだよこの女の敵」

「ふふん、なんとでも言いたまえ。織田作の代理といえば私しかいないのだから…というか織田作が兄なら私も兄に決まっているだろう!?こんなに蝶ちゃんに慕われてるんだから!」

否定はできないその言い回しに、奥歯をグッと噛み締める。
さあ、これは本格的に面倒な事になってきやがった。

恐らく探偵社の奴らは、最初からまともな試験なんざするつもりはなかったんだ。
ようやく気づいた。

俺の覚悟を見たいとかなんとか言って、結局おれを見て楽しみてえだけだこいつら。
港で蝶が苦笑した時に気付くべきだった。

社長に関しちゃ真顔でいるが、止めに入らねえあたり完全にグルだ。

「クソッ、……お、お願い、します…」

なにを〜?声ちっさいよー!という野次を聞きながら、少し声をデカくして、続きを言う。

「ち、蝶さんを俺に下さ___」

しかしここで気が付いた。
本当に馬鹿な奴だ俺は。

「…手前ッ、何が義兄だ巫山戯んな!!?育ても俺だし蝶は元からうちのだこの野郎!!!」
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