第9章 天からの贈り物
「さて」
「!さてさて…始めようか」
探偵社員共が一斉に立ち上がってこちらを見る。
何やら顔つきが変わって嫌な笑みを浮かべ始めるそいつらを見据える。
極めつけは太宰の素晴らしい笑顔だ。
あいつが俺に向かってこんな笑顔を浮かべるなんざ、ろくな事考えてねえ時しか有り得ねえ。
つかろくな事がねえ。
「…………何を、始める気だ?」
恐る恐る聞いてみると眼鏡をかけたいかにも真面目といった風格を漂わせる男を筆頭に、人虎と、あとタレ目でつい先程までヘタレそうだった男が学生服を着た女と共に俺に鋭い目を向ける。
それに物凄く嫌な汗が伝うのだが、蝶は何かを知っているらしく、顔を上げて状態を起こす。
「何って、決まっていますわよ!」
「蝶ちゃんとお付き合い、したんですよね?」
「一応ですよ一応。社長命令もありますし…」
一呼吸置いて、眼鏡の男が物凄い貫禄と共に低い声を響かせた。
「うちの白石とどうこうなりたい輩には課される…面接と、試験だ」
「は…?面接と、試験?」
探偵社の社長までもが事務室に入室してきて、椅子に座る。
まさかと思って蝶の方に顔を向ければ、蝶の奴は苦笑い。
さっきの頑張れって、こういう事か…!!!
「まずは質疑応答だ…うちの白石の名前と生年月日、歳、血液型、好きなものと嫌いなものと、好きなタイプを述べた上で、白石の好きなところを隅から隅まで『す、ストップストップ!!何言ってるんですか国木田さん!!?』無論、面接だが」
『無論じゃないですよ!!それ私が恥ずかしいだけの……ってなんでこんな面接するんです!?意味が分からな____』
言いかけた蝶に口元が緩んで、頭に手を置いて宥め、すぐさま眼鏡の質問に答えるべく口を開く。
「白石蝶、今年で十五になるB型で、誕生日は九月二十四日。好きなものは俺と甘いもんで、嫌いなもんは痛いもんと怖ぇもんと…後、実は粒の餡子が苦手だ」
蝶はなんでそんなの知ってるんだという目で俺を見る。
まあこれもこれで可愛いもんだから、何も答えずに応答を続けた。
「好きなタイプ俺、んで蝶の…」
『なんでさっきからそんな自信満々そうに俺とか言えるの中也さん!!?』
「一言で纏めるとこうなるだろ?」
聞き返せば顔を真っ赤にして本気で照れた蝶の頭に手を置いて、また前を向く。
「プッ、…こういうのがすっげえ好きだ」