第9章 天からの贈り物
『あ、でも仕事の前に、組合の構成員さん達病院に運ば……ッ、?』
動こうとした私の身体を中也さんが押さえつける。
溜息を吐かれたかと思えば、他の人からも同様にはあ、と息を漏らされた。
「白石さん、その方達は今どこに?」
『え、っと…き、旧校舎の保健室に……』
「そうですか、それなら先生に任せなさい」
『そ、そんなっ!あの人達はフランシスさんと同じところに運ばな…ひゃ、ッ』
誰にも見えないような位置で耳をペロリと軽く舐めあげられて、言いきれなかった。
バクバクうるさい心臓に合わせて口をパクパクさせていれば、元凶であるニヤリと笑って……否、ピクピクと眉間にシワを寄せて口角を引き攣らせている中也さんに、ほっぺたを横に引っ張られた。
「お、前はッ…マジで、学習しねえなっっ!!」
『ひひゃいひひゃい…っ、〜〜〜ッッ!!!』
「あんなバカデカい壁ばっか作ってフラッフラんなってんだろうがどうせ!ああ!?そんでもって脚まで折っててなにが病院に運ぶだ、病院に運ばれんのはお前の方だよお前の方!!」
『い、っ……!!?たあ…ッ、な、何もこんな引っ張らなくても』
離された頬に手を当ててジンジンする痛みに涙目になっていれば、中也さんから何か文句がおありか姫さんよ?と威圧されたので、何でもないですと流石に引き下がっておいた。
「ったく…んじゃ、よろしく頼むわ。んで蝶、お前、探偵社に固定具か何かあんのか?こんなもんのために壁なんざ使いやがったらまた無駄に血使うんだから、骨はともかく固定具くれえ付けとかねえと」
殺せんせーははい、と言ってから、すぐに凄いスピードで飛んで行ってしまった。
『あ、る…ごめんなさい』
「あ?なんでお前が謝る」
『……手、かけさせてるから』
「お前な…手かけさせてるわけあるか、こんなもん普通だよ普通。つうか黙って大人に任せときゃいいんだよ、無茶しやがって」
普通、その言葉を選んでくれる中也さんがやっぱり好き。
しかし今度は、こちらがむくれる番だった。
『大人…?』
「…………俺にだ、これならいいかよ」
合格、と笑うと頭をポンポンと撫でられて、異能を使って中也さんの背に背負われた。
突然の事に驚きはしたけれど、まあよくある事だから、すぐに中也さんに抱きついて安心する。
こんな幸せ初めてだ。
こんな身体で、よかった…