第9章 天からの贈り物
私の返事を聞いてから、柔らかく中也さんは私を抱きしめる。
それに私も抱きしめ返して、初めてのこの幸福感を噛みしめるように、中也さんの暖かさを感じ取る。
「好きだ、蝶…」
『わた、しも……ッ、大好き…っ、中也さん、大好き…』
「プッ、知ってる…すっげえよく、知ってる」
涙混じりの声に背中を優しく撫でられて、また一つ、生まれて初めての幸せに包まれる。
「……帰ったら色々、もっと話してえ事あるんだが…何分今日は仕事が多いからな。お前はとりあえずその脚何とか………蝶?」
『…今日は書類の作成くらいで、首領に報告するようなものでもないんでしょう?』
私の推測は合っていたのだろうか、中也さんが何かを察してたらりと冷や汗をたらした。
『だったらパソコンあったら出来るよね……私もパソコンあったらお仕事出来るし』
「ち、蝶……さん?」
『私のところで一緒にするの』
私の一言に太宰さんまでもがえ、と声を漏らしてピシッと固まる。
社長の方にクルリと顔を向けて、じぃっと見つめる。
仁王立ちになる社長にその場の全員が振り向いて、社長の目線に対抗するよう私も目線を送り続ける。
「………丁度いい、許可しよう」
『!ありがとうございますっ』
「「「「嘘だろ…っっ!!?」」」」
特に撃沈している太宰さんと中也さんの反応に更に頬が緩んで、中也さんに笑いかけた。
『中也さん、許可出たよ!今日はずっと一緒だね!』
「ああああ、こっちはいいけどあっちが…クソッ、天国と地獄の板挟み………っ」
「目の前でいちゃつかれる私の身にも……ってそうか、そういう事か。ふふふ、確かに地獄ではあるが、少し面白くなってきたではないか」
太宰さんの発言に何かを察した敦さんは、目の色を変えて輝かせる。
社長の言った丁度いいとは、そういう事なのだろう。
それにしてもなんなんだろ、天国と地獄の板挟みって。
『今日は中也さんと離れないの…………頑張ってね』
「ああ!?頑張るだと!?なんで俺がお前といるのに頑張る必要なんかあるんだよ、どんと来やがれ!!……あああっ!!?」
『中也さんって本当私バカだよね。後、本当に頑張ってね?私もどうなっちゃうのか知らないから』
「どうなるってお前俺をどうする気だよ!!?」
知らないものは答えられない。
だからニコリと笑って誤魔化した。