第9章 天からの贈り物
『そ、だね…っ、殺せんせー、ありがとう……ありがとう…ッ』
「いえいえ、先生ですから」
「俺からも、本当に助かった。今度飲みに行こうぜ、奢ってやるよ」
「!本当ですか!?それでは遠慮なく…!」
奢りに食らいついた殺せんせーは平常運転だ。
コツコツと足音が響いてきてそちらに目をやると、太宰さんが近づいてきていた。
「蝶ちゃん…君が脱出出来ないというのは、想定外だった。いったい中で何があったんだい」
『!……壁を張って、敦さん達が脱出し終えた後に、どこの組織か分からない“人”から首輪を付けられて…』
私の言葉に中也さんは私の髪をよけて、首輪に触れる。
敦さんも芥川さんもいたから、あの男の子だったということは伏せておいた。
辿るならばあの子の言っていた“ボス”とやらの方だろうから。
中也さんの手に少しくすぐったくなって口をつぐむと、再び太宰さんの声が聞こえる。
「……いいよ、中也。どうせこれは組合が所有していたものだから、これをつけた相手の素性は辿れない…君も早く外したいだろう、こんなもの」
「分かってんじゃねえか………こんなもん塵になるまで粉砕してやる」
ピシッと首輪から音がして、一瞬で本当に塵になっていた。
それを全て中也さんは異能で太宰さんの持っていた袋に回収させ、首から恐怖が抜け去っていく。
「これは私と森さんとで調べておこう…何はともあれ、無事でよかった。それにまあ、何とも綺麗な姿になっちゃって……ほら中也、とっとと言いなよ。折角蝶ちゃんがこんな格好をしてくれてるんだからさ」
自分の格好を思い出して、ここになってようやく恥ずかしくなってきた。
中也さんに見られるとなっては話が別だ、心の準備も何もしてなかったのに。
『え、っと中也さん…こ、これはその……っひゃ、…!?』
言い切る前に、首に何かが巻き付いてくる。
それは丁度私の首に合うサイズで止め具が止められて、さらさらとした感触が肌に伝わった。
「分かってる…が、お前の首輪はこっちだろ」
『へ、ッ!?ってこれ、チョーカー……?』
首に巻き付けられたそれに触れると、レースの手触りがする。
「お前は俺のもんだからな…蝶」
中也さんの声に、彼の瞳を見つめる。
中也さんも私を優しく見つめてから、意を決したように口を開いた。
「俺を、お前の……貴女の恋人にして下さい」