第3章 新しい仲間と新しい敵と…ⅰ
朝に続いて起こった、中也さん関節キス事件から無理やり逃げ、部屋へと一足先に戻ってきた。
戸を閉めて、それを背にへたりこむ。
『朝からなんて日なの今日は、心臓に悪すぎる…』
でも、それで普通そうにしていた中也さんの様子を見る限り、意識すらしてもらえてないんだろうなと思う。
いや、そもそも中也さんは、私が懐いているからスキンシップが多いと思ってるんだっけ。
『……でもこれ以上の愛情表現なんて無理、恥ずかしすぎ』
時間かけるしかないのかな、なんて開き直り、考えるのを放棄するように出発の準備を始める。
荷造り自体は終わっていたのだが、ここである問題に直面した。
『服、どーしよ…』
そう、私の制服は、不良さん達にいいようにバラバラにしてもらえたおかげで、とても服として成立するような形を留めていないのだ。
修学旅行だから私服を持ってきている筈もなく、ましてや替えの制服なんてもってないし。
__一瞬首領に相談しようという考えが脳裏をよぎったが、ろくな服が無さそうな気がするので却下。
中也さんからいただいた服も部屋着使用である上、とてもじゃないけど外で着るのは勿体ない。
荷物の前で頭を悩ませていると、コンコン、とノックの音が響く。
『はーい』
「蝶?俺だ。入ってもいいか?」
昨晩の着替えの件もあって遂にノックをしていただけたのだろうか、ありがたい。
『どうぞ、大丈夫ですよ!』
しかし朝から色々とあったため、あくまでも平静を装いつつ対応をする。
これがかなり難しい。
中也さんも部屋に入ってきて、また二人きり。
…やっぱ私ばっかり意識してる。
「なあ蝶、朝から気になってたんだが…お前もしかして、着れる制服ねえのか?」
そして鋭い指摘。
本当、何で私の気持ちにはあんなに鈍感なんですか!
『は、はい。誰か……出来れば首領以外で、服を持ってる人なんていないかな〜って思ってるんですけど…新幹線に乗れるような格好で』
「そうだよな、制服あんな状態だったし。」
敢えて昨日の事を思い出させにくいような言い回しをしてくれてるのかな、なんて勝手に想像して舞い上がる。
ちょっとした一言でここまで幸せになれるだなんて、相当溺れてるな私。
そんなことばかり考えてたから、中也さんからの提案に暫く頭がついていかなかった。
「なら、俺の服着るか?替えあるし」