第5章 04
『あのさ 君…』
連れてこられた場所はお洒落とはかけ離れた雑居ビルの前
さんはため息を吐き出す
確かに雑居ビルだからと言ってお洒落なカフェがないとも美味しいケーキが出そうにないとも言えるわけではないが
それでも連れてこられた場所は様子がおかしかった
「このビルなんです!!もちろん ここまで来てくれたんですから一緒に行ってくれますよね?」
妙に威圧的な言い方にさんはまたひとつため息を吐きヘイヘイと軽く返事をした
「ここです!!名無しセ ン パ イ」
してやったりとでも言いたげな女の物言い
そこはお洒落でも ましてやカフェでもない
《桃巨会》と書かれた小さなプレートそして後ろにはゾロゾロと階段から上がってきたガラの悪そうな男が数人
「はやく入って あんたに拒否権なんてないよ 意味わかるよね?」
打って変わって強気な物言いになった女
『あーあ 騙されちったよ…なに?中ではちゃんと茶菓子くらい出してくれんの?じゃなきゃ帰るけど』
さんは鬱陶しそうに長い髪を一つにしながら中に入る
「は?あんた状況わかってんの?この人数から逃げられるとでも?」
さんの目の前には体格の良さそうな男が数人 後ろにも数人 十人近くの男に囲まれている
「ねーチャン可愛いなぁ?お兄さん達優しいから 言う事聞いてくれたら乱暴にシないからね〜」
ニヤニヤした男は上から下まで品定めする様にさんを見ながら言う
『あーーークソ!面倒くせえ!!御託はいいから用件を言え!!』
大の男に囲まれて臆すどころか強気なさん
先ほどの女は奥の部屋へ行ったようだ
「いいな!ねーちゃん 俺ァ気の強い女は好きだぜ!!」
ソファに座ってタバコを吹かす男が口を開くと周りの男達が静かになる
恐らくこの場のリーダーであろう
「まぁ これは不幸な事故だ…俺等はちょーっとこの街のルールについて行けねえ無法者でな?ヤクザなんて職業やってるわけだよ…」
さんは面倒臭そうにタバコに火をつけると深く吸って男を見た