第1章 00
「おっ!!今日も一際輝いてるねぇ
今晩こそ……どうだい?」
鼻の下をデレデレとだらしなく伸ばしながら 中年の男はセクハラまがいな言葉を投げかける
『あらっ…まったく
家に帰ったら綺麗な奥様と可愛いお子さんがいらっしゃるでしょう?
私が入る隙間なんてありませんわ』
膝に触れる汗ばんだ手を払い除けるわけでもなく ごく自然に酒の入ったグラスを渡し回避する
納得いかない表情の男も 妖艶に浮かべる笑みを見れば何も言い返しはしない
「お話し中失礼します
VIP席のお客様がそろそろお帰りです」
黒服の男が丁寧に話を中断させ 女に耳打ちをした
少し失礼します
そう言って席を立つ姿さえも人を引き付ける…
彼女が街1番の高級クラブに入店したのは一ヶ月前
新人とは想像もつかない様な洗練された接客と 誰にでも優しく気さくな性格…それに加え 最近では珍しい黒くて綺麗な髪をかき上げながら微笑む妖艶な姿は誰をも魅了した
彼女目当ての客がほとんどであろう
日々店は彼女目当ての客で賑わっていた
深夜1時
最後まで残っていた客を見送ると 薄暗かった店内がパッと明るくなった
「おつかれさまで~す」
「また明日ね~」
流石は街1番の高級クラブ
美しい容姿の女達が次々と店を出て家路についた
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