第8章 ミュシャ
「ありがと…」
潤が言うと、翔ちゃんが潤がしてた作業を引き継いだ。
バッグに服を詰めながら、ニコニコしてる。
俺も棚から物を出して、ベッドの上にどんどんおいて行った。
潤ははらはらと涙をこぼしていた。
意地張るからだ…バカ…
「潤…?もう泣かないの」
翔ちゃんが作業しながら、潤の顔を覗きこむ。
「翔くん…」
なんとか涙をこらえて、潤は顔をあげた。
「智くんがさ、潤にプレゼントくれるって」
「へ?」
俺はなんにも用意してない。
「え?なに?翔くん…」
潤も不思議そうな顔してる。
「俺と雅紀の間の部屋、一つ空いてるから、潤にくれるって」
「ちょっ…」
「ホント!?リーダー!?」
潤が顔を真っ赤にして、こちらを見た。
ものすごい期待を込めた、キラキラした目で俺を見てる。
「う……」
「ニノもいいっていってたよ?」
潤の後ろから、ニヤニヤしながら翔ちゃんがこちらを見てる。
…やられた…嵌められた…
「ホント!?ほんとに!?リーダー!」
子供みたいに喜ぶ潤が、あんまりにも不憫で…
俺は、NOとはいえなかった…