第8章 ミュシャ
「マジか…アイツ…」
舌打ちしたい気分だった。
この際、利用できるものはなんでも利用して、体調を良くするって言ってたのに…
早速、意地はってるじゃないか…
「行く」
そういうと、出かける準備を始めた。
裏口に行くと、翔ちゃんがドアを開けてくれた。
…いつもこうやってさりげなく、翔ちゃんは俺のことエスコートする。
悪い気はしないんだけど、俺、男だし…
複雑…
翔ちゃんの車に乗って、潤の入院する病院に向かう。
入れ違いになったらいけないから、早めに着いた。
病室に着くと、潤が退院の準備をしてる真っ最中だった。
「オイ…」
声を掛けると、驚いたように振り向いた。
「潤…迎えに来たよ」
翔ちゃんが、笑顔で言う。
「リーダー…翔くん…」
「意地張るなや…」
キャップを深々と被った。
「ごめん…」
潤の泣きそうな声が聴こえる。
「俺、もう大丈夫だから」
「バーカ」
「さ、手伝うから…意地はらないの」
翔ちゃんが優しく潤の背中に手を置いた。
「うん…」
俺達に背中を向けてるけど、潤は泣いてるようだった。