第8章 ミュシャ
しばらく、そんな生活が続いた。
俺と和也が二人っきりになれるのはアトリエだけだった。
電熱器がジィジィ音を立てているのを、ソファに座りながら二人で聞いている時間が幸せだった。
だって…付き合ったばっかりだし…
その…ね。
ヤリたいことだって、あるし…
すっかり、アトリエは俺達のリビングみたいになって。
5月に入る頃、和也が泊まりの仕事で地方に行ったから、久しぶりにリビングで過ごしてた。
世間はゴールデンウィークってやつで、外に出る気にもならなくて。
和也が傍に居ないから、なんとなく手持ち無沙汰で。
リビングで和也の用意した、大画面のテレビをボケーっと見てた。
相葉ちゃんはロケで、翔ちゃんは珍しく仕事が休みで家に居た。
「ねえ、智くん」
「んー?」
すっかり翔ちゃんはこの家に溶け込んだ。
翔ちゃんが家にいても、びびらなくなった。
「今日、潤が退院なんだけど…」
「えっ!?なにそれ。聞いてない」
「昨日、急に決まったんだ」
「そっか…」
「俺、迎えに行くんだけど、一緒にいく?」
「え?なんで?ご両親じゃないの?」
「うん。潤がね、家に帰るだけだからって断ったんだって。でも、一人じゃ不安だからって、ご両親にお願いされたんだ」