第8章 ミュシャ
台所に入ると、和也を抱き寄せた。
「智…」
「ねぇ…和也…なんで…?」
「…別に…イイかなって思って…」
「なんで…?」
翔ちゃんがここに越してくることを和也は反対しなかった。
理由をいくら聞いても教えてくれない。
何を翔ちゃんに言われたんだろ。
「なんだっていいよ…翔さんがここに住んだって、俺たちなんにも変わらないだろ?」
そういうと、和也からキスしてきた。
ガタンと菓子箱が床に落ちる。
ぎゅうっと抱きついて、すぐに舌が入ってくる。
「和也っ…どうしたのっ…」
キスの合間に、聞いてみるけど和也は益々激しく俺を貪る。
「ん…っ…だめ…シたくなる…から…」
息が上がってくる。
身体も急激に熱くなる。
「欲しい…智…」
「和也っ…」
和也の身体を引き寄せようとした瞬間、台所に近づく足音に気づいた。
お互い、バッと身体を離した。
「智くーん?手伝おうか?」
「あ、だ、大丈夫っ…」
ひょいっと翔ちゃんが、顔だけ出した。
「あ…お取り込み中だった?」
にやっと笑うと、また足音はリビングに消えていった。
「俺…保たないよ…和也…」
前かがみになりながら、泣きそうになった。