第8章 ミュシャ
「と、いうことで本日からよろしくお願いします」
リビングのラグの上で、翔ちゃんが手をついてお辞儀した。
俺と和也と相葉ちゃんは三人がけのソファのうえで、慌てて正座した。
「あ、こりゃどうも」
雅紀がペコリと頭を下げた。
「つまらないものですが…」
翔ちゃんが後ろから菓子折りを差し出す。
「あ、こりゃ…結構なもので…」
和也が受け取る。
「何とぞ、今後共よしなに」
また手をついてお辞儀するから、俺達もつられて頭を下げた。
翔ちゃんが越してきた。
相葉ちゃん方式で、この家に住む。
だから荷物はそんなに多くない。
部屋は1階の一番裏口に近い方。
翔ちゃんは深夜に帰ってくることが多いから。
相葉ちゃんの部屋からは2つ隣で。
バスルームのすぐ近く。
翔ちゃんの部屋の隣は、翔ちゃん専用の書斎になった。
翔ちゃんが二部屋使っても、まだまだこの家には部屋が余ってる。
だから、翔ちゃんの使いたい放題なのだ。
「あ、美味しそうなお菓子だね。俺、お茶淹れてくるよ」
和也が菓子箱を持って立ちあがったので、俺も手伝うことにした。
「智くん、これからよろしくね」
にっこり翔ちゃんが笑うから、俺もなんとなく笑っておいた。