第7章 柔らかな刺
和也が照れながらドアの内側に入るのを見届けて、また庭に出た。
植源さんと相葉ちゃんは温室に入っていくところだった。
追いかけて行って温室に入る。
やっぱり温かいな…温室。
「あれ?ニノ帰ってきたんじゃないの?」
「うん。帰ってきた。あ、親父さん、二宮がくるから待っててやって」
「へい」
相葉ちゃんが手に持ってる植物…
なんか見たことある。
「ね、それなに?」
「ん?ローズマリーだよ」
「あ、なんか聞いたことある」
「ハーブだよ。いい香りするんだよ。これね、挿し木して増やすんだ」
「ええ!?そんなことできるの?相葉ちゃん」
「やるの!これから!」
また拗ねた。
「これから花が咲くんだって。でも香りがいいのは葉っぱで、今が一番いい香りなんだってよ」
そう言って鉢を差し出してきたので、匂いをかいでみた。
「…よくわかんねぇ…」
「鼻炎持ちに言った俺がバカだったよ…」
そう言ってシュンとしてしまった。
「くっくっく…坊っちゃん、相葉さんを悲しませねえでやってくださいよ」
親父さんが何気なく言った一言にどきっとした。