第29章 特別編 天は大野のケツよりも青く
「俺自身も…よく、わからない…」
「え…?」
「急に…本番は大丈夫なんだけど、リハとかでステージに立ってると急に不安になって…」
ぎゅっと翔ちゃんが俺の服を掴んだ。
「頭が一瞬、クラっとして真っ白になる…」
「翔ちゃん…」
「でも、大丈夫なんだ。しっかり目を開けてれば、大丈夫…」
今まで気づかなかった。
リハのときは、順番を追うことで必死だし。
何より、翔ちゃんはいつでも…いつもの翔ちゃんだったし。
「…いつから…?」
「それは…」
翔ちゃんが答えようとしたとき、廊下から人の声がして、翔ちゃんの身体が離れていった。
ズズッと鼻を啜ると、すぐに立ち上がった。
「…ごめん…俺自身も、うまく説明できなくて…」
「あ。うん。わかった」
ぎゅっと翔ちゃんのジャージの裾を掴んだ。
「智くん…?」
「うん…あのね。夜、みんなに聞いてもらお?」
「えっ…」
「これね、俺の手に負えないから。今晩、みんなで考えよ?」
「だっ…だめだよ!」
「なんで?」
「だって、こんな時に…」
「恋人のことだよ?俺たちの」
ぐっと翔ちゃんは詰まった。
「それに、これからツアーだよ?」
タイミング的に、ツアーに入ってしまうまで、5人でゆっくり話すことなんて不可能だと思った。
だから、今しかない。