第29章 特別編 天は大野のケツよりも青く
じいっと翔ちゃんの目を見た。
気まずそうに目を逸らすと、少し俯いた。
「俺たち、準備はできてるよ?」
「え…?」
「翔ちゃんのこと…ううん…。翔ちゃんだけじゃなく、みんなのこと。お互いにいつでも支える準備、できてる」
「智くん…」
全部、みんなが言ったこと。
ちゃんと翔ちゃんのこと…お互いのこと、まっすぐ見てるんだ。
俺もだから、まっすぐ向き合わないと。
「好きだから」
そっと翔ちゃんの肩に触れた。
「翔ちゃんも、そうなんじゃないの?」
動かない翔ちゃんの腕を引いて、胸に抱きしめた。
「…そう、だよ…?」
「みんな、すごく翔ちゃんのこと心配してる」
「…うん…」
腕の中の翔ちゃんは、力が抜けて。
ふうっと息を吐き出した。
「ごめん…信用してないとか、そういうことじゃ…ないんだ…」
すごく、すごく小さな声だった。
「翔ちゃん…」
顔を見ようとしたら、ぎゅっと胸板に押し付けて見せてくれなかった。
「悩みとかじゃない…そういうんじゃない…」
「言って?翔ちゃん」
「智くん…」
翔ちゃんは黙り込んでしまった。
そっと背中を擦りながら、翔ちゃんが喋り出すまで待った。