第29章 特別編 天は大野のケツよりも青く
「なんにもないって…」
そう言ってペットボトルをテーブルに置いて立ち上がろうとする。
「まだ話、終わってないよ」
「……」
珍しく、翔ちゃんは黙り込んだ。
それから俺の顔を見て、諦めてまたソファに座り直した。
「…別に、ないよ?不安に思ってることなんて…」
「俺たちにはわかってるんだよ?」
「……え……?」
「どうして誰も、翔ちゃんがあんな酷いことしても、黙ってると思うの?」
「え?酷いこと?」
「寸止めえっち」
「あ…ああ…」
ちょっと口元を隠しながら、気まずそうな顔をした。
まずいことしてるって自覚は…なかったな、こりゃ。
「どうしてこんな忙しい時期に、あんな乱暴なことして、誰も怒らなかったかわかる?」
「…いや…」
「みんな、気持ちよかったからとかじゃないよ?翔ちゃんが、もしかして何か抱えてるのかもって…思ってたんだよ?」
「それって…八つ当たりしてるって…思ってたわけ?」
「そうとは言ってない。でもね、ストレスをうまく発散できてないんじゃないかって。そう、思ってたよ?」
「別に…」
「翔ちゃん。いいんだよ?それでも」
「え…?」
「俺たち、そんなに頼りない?」
「いや…そういうわけじゃ…」