第29章 特別編 天は大野のケツよりも青く
「んもー…」
ずずっとコーヒーを啜り込んだ。
「だからあ…翔ちゃんのこと」
「おお…」
「もお、俺じゃわかんねーよ…」
「ぶぶ…」
「なあに笑ってんだよっ!」
「だって…」
「じゃあ、潤はわかるのかよっ」
「んー…」
ペラっと書類をテーブルに置くと、今度はタブレットを手に取った。
それを操作しながら、潤はニヤニヤしてる。
「正直、俺は誰のこともわかんないな…」
「は?」
「いや…まあ、そりゃさ…みんなとは一緒にいる時間が長かったから、ある程度はね。わかるけどさ…」
「うん…」
少し顎に手を当てて、考え込んでる。
でも、目はタブレットに落としたままだ。
「今まで積み重ねてきた日常の上に今があって、それぞれの人が居てさ…積み重ねてる過程を見てきてるから、ある程度は分かる」
「おん…」
「でもやっぱり、自分じゃない人間のことなんて…ちゃんとわかるってことは一生ないんだと思う」
「う、うん…」
なんか話が難しくなってきたぞ…
ちらっと潤が俺の顔を見た。
ぶっとまた噴き出して、コーヒーを啜った。
「だからさぁ…考えててもわからないから、直接聞いてみたら?」
「ええっ…」
「見てるだけじゃ、わかんないもん」