第29章 特別編 天は大野のケツよりも青く
それにもう一つ…
翔ちゃんが何に悩んでいるかっていうのを考えるって宿題が、みんなから出てる。
「もおおお…考えることいっぱいあって、頭がパルプンテだよ…」
「ぱるぷんて?」
「いや、なんでもない…」
くすっと笑うと、植源さんはお茶を啜った。
「若い時分は…なんでも悩みゃいいんですよ、坊っちゃん」
「え?」
「年を取れば、自然と物事の道理がわかるようになってくる。そうなったら、悩むことなんて減りまさぁ…」
「そうなの…?」
「それにね、ちっとばかり脳みその働きも悪くなるし、新しいことは受け入れ難くなっていく…だから、脳みその柔らかい内は悩むようにできてるんですよ、人間」
「なんでさ」
「柔らかくないと、悩んだことが身につかないからでさぁ」
「ふぅん…」
そうなのかなあ…
「って、俺、もうそんな若くないよ?もうすぐ38歳だし…」
「まだまだ…アタシみたいなもんからしたら、ケツの青い若造ですよ」
「まあ、植源さんから見たらそうだろうけどさ…」
「四十にも届いていない男なんざ、ガキに下の毛が生えたようなもんでさぁ」
「ぶっ…」
「四十に入れば、身体も変わる。老いてくるんでさ。そいで、脳みそも硬くなってくる…その代わり、今までの悩んだ経験値で道理がわかって物事を処理できるようになる。だから、そうなるまえに、しこたま悩みゃいいんですよ」