第29章 特別編 天は大野のケツよりも青く
「お。いい匂いしてるね」
その翔ちゃんが台所の引き戸から顔を出した。
でた。帝王…
「俺の分もある?」
「うん。5人分淹れてるの」
「さんきゅ…じゃあ、この前の頂き物出そうか…」
お菓子をしまってる戸棚の引き戸を開けると、中を物色してる。
「コーヒー淹れてるの?」
今度は、台所の引き戸から相葉ちゃんが顔を出した。
「一応、みんなの分淹れてるよ」
「わあ!嬉しい!ありがとう!リーダー」
相葉ちゃんは身をかがめると、小上がりに座る俺の額にちゅっとキスをした。
「まーさきー…また潤に怒られるぞ?」
ちらっと翔ちゃんがダイニングへの出入り口を見た。
「ひっ…」
そこには、顔だけだしてじとーっとこっちを見ている潤がいた。
「こええわっ!スツールに触ってねえだろうが!」
「…この恨み…忘れねえぞ…」
「キレイにしたろうが!リーダーがっ!」
そう、相葉ちゃんはなんもしてない。
逆に座面のスエードがへたりそうなくらいゴシゴシこすって、怒られてたくらいだ。
だから俺が一人で掃除したんだ。
「もーいいだろ?潤」
翔ちゃんが戸棚から菓子箱を出してきて、ちらっと潤の顔を見た。