第19章 天は藍よりも青く
「智くーん」
翔ちゃんの声が聞こえてきた。
「あれ?」
「仕事中止になった!」
翔ちゃんは車庫の方から直接庭に入ってきた。
「えっ…どうしたの?」
「取材先が大雪で、新幹線止まっちゃった」
「まじか」
「だから、今日まるまる空いちゃったよ…」
「そっか…お疲れ」
「ありがとう、あ。大角さん!」
潤と話す大角さんを見つけて、翔ちゃんは走っていった。
そういえばこの前、なんか直すって言ってたなあ。
2時間ほど外に居るから、顔が冷たくなってきた。
楠木を見上げると、ちょっと寒そうだった。
目を閉じると、皆の賑やかな声が聞こえた。
”智くん、ありがとう”
ああ、ばあちゃん…
俺の方こそありがとう。
この家のおかげで、大事なことにたくさん気づいたよ。
そして、思い出させて貰ったよ…
本当に、ありがとう。
目を開けると、とても鮮やかな青空。
俺は立ち上がると、母屋に入った。
そのままアトリエに入ると、電熱器を点けた。
かじかんだ手を炙って温めると、スケッチブックを手にとった。