第19章 天は藍よりも青く
「そいつぁ、いけませんや!」
植源さんは慌てて近所の寿司屋に無理言って出前を頼んでいた。
遠慮したんだけど、昨日夕食を食べなかったから今日こそと譲ってくれなかった。
なんで年寄りは飯を食わせたがるんだ…
植源さんには、でえくの大角さんも来ていた。
「すいやせんね…谷中にいらっしゃるっていうから、こちらに来たほうが早いかと思ったんですが…」
また頭髪のない頭を掻いている。
「おい、まだ寺の方は渋滞してやがんのか?」
「知らねえよ。てめえでみてきやがれ」
またコントが始まりそうだったから、期待してみていたら、二人は俺達の顔を見てやめてしまった。
チッ…残念。
「話は飯くってからにしやしょう」
そう言って大角さんは自分の家に戻っていった。
暫くすると戻ってきて、お重を持ってきた。
「こいつぁ、うちの女房が作ったもんなんですが…」
そう言って、おせち料理を振る舞ってくれた。
下町のおせちを食べるのは初めてだった。
「いただきまーす!」
「どうぞ遠慮無く」
祝い箸を割って、思い思いにおせちをつつく。
伊達巻うまそう。
「すいやせん。もう正月も4日なんで、おせちが目減りして…」