第5章 グリーンフィンガー
少し腰をずらして、ニノの座るスペースを空ける。
ニノは何も言わないで、じりっとその分を占領してきた。
そのまま俺達は何も言わないで、座ってた。
なにから言えばいいのかわからない。
相葉ちゃんは酔っぱらってたけど、昨夜、俺達はほぼしらふだった。
ニノは俺にキスして、俺はそんなニノを抱き寄せて。
おまけにニノは俺のこと、自分のもんだって言うし。
触れている背中が熱い。
昨日、言い掛けてた言葉が喉まで出かかってた。
ニノ…俺、お前のこと…
ニノが、コツンと石を蹴った。
スツールが揺れた。
日差しは温かく俺たちを包んでる。
植源さんが、温室の強化ガラスをきれいに磨いてくれたから、とてもきれいに外が見える。
庭を見遣ると、相葉ちゃんが手にシャベルを持って歩いていた。
手には袋を持っている。
さっきのしおれた若木のところにいくと、根本を少し掘って袋の中身を取り出し、埋めている。
肥料でもやってるのかな。
「ニノ…」
「ん…」
また石を蹴った。
コツンとどこかに当たった音がした。
俺は後ろに手を伸ばして、ニノの手を握った。
顔が見えない方がいい。