第16章 IF…
「兄さんお願いだ…許して…」
「何をだよ…なにを許すんだよ…お前は罪を犯したのか?」
「違う…違うよ…兄さん…」
ゆっくりとリュカに近づく。
リュカは俺を見上げ、怯えた目をしてますます後ずさる。
「なんでだよ…なあ…」
なんで手のひらに居ない。
なんで俺の…傍に…
「リュカ…」
リュカの細い首に、手を回した。
「あ…兄さん…」
「リュカ言ってみろよ…お前の罪を」
遠くの音が、大きくなる。
人々の口々に叫ぶ音が、轟く。
大砲の音も聞こえた。
バスチーユ要塞から大砲を撃っているのだろうか。
窓の外が一瞬、明るくなったかと思うと、耳をつんざくような音が響いた。
「うっ…あ…」
リュカが苦しげに呻く。
手に力が入っているのに気づかなかった。
「に…いさ…ん…」
リュカが俺の手を掴む。
ぎりっと俺の手に爪を立てる。
鋭い痛みが走るが、俺の手は緩まない。
「リュカ…なんでだよ…」
「あ…う…リオネル…」
リュカの目が固く閉じられた。
口の端から、唾液が漏れだす。
「リオネル…愛し…て…?」
「え?」
「僕のこと…愛して…る…?」
愛…?