第16章 IF…
「僕を…愛して…」
「やめろっ!」
「兄さん…愛してる…」
「やめろおおおおおおおおおっ…」
手に、思いっきり力を入れた。
「お前はあの女中が好きなんだろ!?なんだよ…愛って…愛してるってなんなんだよ…」
「にい…さ…」
ぐにゃりとリュカの身体から力が抜けた。
「あああああああああああっ…」
パタリ…
リュカの手が床に落ちる。
俺の手から力が抜けると、ずるりとリュカの身体が床に崩れ落ちた。
「リュカ…?」
リュカは動かない。
ピクリとも動かない。
「リュカ…返事しろよ…」
また、辺りが明るくなったかと思うと、すぐ傍で轟音が響いた。
「リュカっ…!おいっ…リュカっ…!」
リュカの身体を抱き起こす。
だが、リュカは目を覚まさない。
だらりと力の抜けた身体を必死で掻き抱いた。
「リュカっ…リュカぁっ…」
ぎゅっと抱きしめた身体から、知らない香りがした。
あの女中の香りだ。
その瞬間、何かが俺の中で切れた。
「は…はははははは…」
可笑しくなってきた。
何やってんだ俺…
「あははははははは…あはははは…」
弟は、もういない。
俺も、もういなくなる。
リュカ、お前の元に…