第16章 IF…
窓の外には、バスティーユ要塞が黒々と聳え立ってた。
「…ここまで喋ったからには、この仕事断れないぞ」
ロランがこちらを向く。
「わかった…」
「いい了見だ。弟には医者をつけてやろう」
「ほんとに!?」
「ああ…俺達の仲間には医者もいるんだ」
ガエタンとロランは俺を見て笑った。
俺もまた、笑った。
ガエタンの言っていることは、よくわからなかった。
広場にいるいい年をした大人達が言っているようなことなんだろう。
とにかく俺は言われた仕事をすればいい。
それで腹いっぱい食えて、しかもリュカは医者にもかかれる。
いいことずくめだ。
部屋に戻ると、リュカはベッドに横になりながら窓の外を見ていた。
何気なくその見ている先を見ると、庭で女中が洗濯物を干していた。
女に見とれている。
「リュカ」
なぜだか黒い感情が湧いてくる。
「あ…兄さん。どうだった?」
心配そうな顔をこちらに向ける。
「どう…って?」
意地悪く聞きながら、リュカの寝るベッドに腰掛ける。
「だから…仕事の話…」
「さあな…おまえにゃ関係ないよ」
「え…?」
リュカが起き上がって、俺の上着を掴む。