第16章 IF…
その間、ロランは俺のことを根掘り葉掘り聞いてきた。
「ふうん…ご両親はもう亡いのか…」
そういうと、顎を手のひらに載せてなにやら物思いに耽った。
「なあリオネル。その身体の弱い弟さんと一緒に、ここで働かないか?」
「えっ?」
「お前にぴったりの仕事があるんだ…」
ロランは満面の笑顔で俺の頭を撫でる。
「ちょっ…やめろよ!」
「ははは…すまん。まあ、籠屋よりはよっぽどいい金が稼げるぞ。考えておいてくれ」
どんっと目の前に、シチューの入った皿が置かれた。
「腹いっぱい食っていきな!」
料理人の男が豪快に笑った。
夢中で俺はそれを食った。
お腹が痛くて、もう入らないってところまでシチューを胃袋に流しこんだ。
蕩けた頭で考えた。
毎日シチューが腹いっぱい食えるなら…
なんの仕事だか知らないけど、やってみるか。
籠屋に戻って、ジョエルに早速話すと止められた。
「給料はこれ以上は払えないけど…国民議会のやつらとつるんで、おまえにいいことがあるとは思えない」
メガネを直しながらしゃべるジョエルの言葉も、あまり耳に入らなかった。