第15章 サロメ
皆で母屋に戻ったけど、気がついたら和也が居なかった。
慌てて蔵に戻ったら、庭の通路の上で立ち止まってる。
「和也?戻るぞ?」
手を引いたけど、動かない。
「智…俺、もうちょっとやる」
「えっ…明日も稽古だろ?」
「なんか…なんか掴めそうなんだよ…」
「和也…」
「ひとりでいいから、ね?」
そう言って蔵に掛け戻っていった。
「和也!」
蔵の扉が閉まると、そこは立ち入っては行けない空間になったみたくて。
扉を開けることができなかった。
ぎゅっと手を握って母屋に戻った。
台所に行って、ジャーを開けた。
おにぎりを二個作った。
お茶のボトルを持って、蔵に戻った。
「和也」
「んー?」
蔵の中から声が聞こえる。
「ここに、夜食置いとくから…頑張れよ」
「……ありがとう…智…」
「おう、じゃあな。寝るときは俺の部屋に来いよ?」
「わかった」
母屋に戻ってみると、皆リビングに居た。
「ニノ…まだやってんの?」
翔ちゃんが心配そうな顔で聞いてくる。
「うん…」
「そっか…一人にしといたほうがよさ気?」
潤がクッションを抱えて見上げる。
「まあな…」