第15章 サロメ
今でも充分凄いのはわかってる。
でも、あいつの中のまだ破ってない壁。
この役で破れるかもしれない。
あいつは、演出家じゃなくて役者なんだ。
そしてこの公演の座長でもあるんだ。
だから、破って欲しい。
「ニノがこれ以上凄い役者になったら…嵐続けられんのかな…」
「ばーか。岡田みてみろ。大丈夫だって」
「ああ…岡田くんか…でも、岡田くんよりも凄いことになりそうな気がする…」
「まあな…才能だけで言ったら、和也のほうが上だからな…」
俺たちはシビアな世界にいる。
才能だけじゃ駄目だし、人気だけでも駄目で。
それが重なった時、凄いことが起きる。
それが10年前の俺達にも起こった。
だからこそ、お互いのことは真剣に見てる。
どんなことができるのか、できないのか。
それでメンバーに余計な負荷を掛けたくないから。
できること、できないこと慎重に見極めてお互いを支えあってる。
それが、知らないうちにできた不文律で。
畳に寝転がる俺たちは、和也の芝居の才能、そして潤の演出の才能について、延々と語り合った。
あの二人が、末っ子なのに俺たちを引っ張って行ってることに、なんだか三人で照れた。