第15章 サロメ
「ん?内くん」
「え?なんだって?」
「だから、内博貴くん」
「お、男だろ!?」
「男だよ?」
積み上げた畳の上に突っ伏した。
「冗談だろ…?腐女子の皆さんが喜ぶじゃねえか…」
「薄い本が飛ぶように売れるだろうね…年末の有明が楽しみだよ…」
「ばか…最近はJの規制厳しいんだぞ…」
「あんなのいたちごっこで、完全に規制なんかできないのにね…」
和也と俺は、遠い目をした。
「ま、でもね。内くんは俺の弟の役なの」
「弟?」
「だから…なんていうのかな…肉親の愛がわからないっていうか…俺の役…」
「ああ…そっちの愛なのね…」
「でも、俺、本当の愛があったと思う」
「お」
「禁断の愛じゃないけど…男なのに愛したっていうのも、あるんじゃないかなあ…」
「ま、それがないと殺しはしないだろうね」
「やっぱそう思う?」
「俺はね。そう思うよ?」
稽古はまだ始まったばかり。
台本の導入部分の稽古をした。
「まだ立ち稽古行ってないから、自由に動いて演ってよ」
和也がいうから、台本を読みながら動きを少しいれてみた。
なんか…新鮮だ。
和也とこうやって稽古することなんて、今までなかったから。