第15章 サロメ
次に起きたら、もう昼近くになってた。
和也は、もうベッドに居なかった。
下に降りて行くと、台所から美味しそうな匂いがしてた。
「和也」
「あ、おはよ。もうちょっとでできるからね」
フライパンの上で、器用に箸を動かしてる。
薄焼き卵を作ってる。
テーブルの上には、ケチャップライスが載ってた。
「あ、オムライスしてくれんの?」
「うん」
「やった!」
「昨日、疲れてるのに無理させちゃったから…お詫びだよ」
「いいのに…そんな…」
和也は一生懸命、卵を焼いてる。
「あんね…」
「ん?」
「サロメは…愛を知ってたと思うよ…?」
「え?」
「愛がでかすぎて、制御できなくなった。それだけなんじゃね?」
愛しすぎても死ぬ。
愛されなさすぎても死ぬ。
人間って、厄介な生き物だ。
「智…ずっと考えてくれてたの?」
「おお。ま、あくまで俺目線だけどな」
「ありがと」
綺麗な薄焼き卵が二枚焼けてた。
「おお…すげえな…」
「…んふ…」
和也はぎゅっと俺に後ろから抱きついてきた。
「愛しすぎても殺される…愛されなさすぎても…殺される…」
俺とは全く逆の言葉が、和也の口から飛び出して。
苦笑いして身体を反転させて抱きしめた。