第15章 サロメ
明け方、目が覚める。
和也は俺に裸で抱きついたまま、眠ってる。
相当、悩んでんだな…今回の役…
しかも舞台だ。
映像みたいにごまかしが効かない。
目の前のお客さんを、小手先で騙すことなんてできない。
和也は器用な役者だと思う。
だけど、たまに器用すぎて仇になってる。
まるで演出家が芝居やってるみたいになるんだもん…
演出家は、本来役者じゃないからね…
役者は常にエモーショナルでないといけない。
和也は頭が良すぎるから、演じながら演出家的目線になってしまうことがあるのだ。
それがそのまま芝居に出る。
ある意味、エモーショナルだけどね…
だけど、それはお客さんに絶対に伝わる。
その瞬間、お客さんは舞台の魔法から覚めてしまうのだ。
”ああ、あそこに居るのは役の人じゃなくて、二宮和也なんだ”
って、気づいてしまうんだ。
すやすや眠る横顔をじっと見つめた。
「頑張れよ…和也…」
そっと髪を撫でていると、また眠りに吸い込まれていった。
あんまり疲れて、夢も見なかった。
腿が筋肉痛になった…
腕も…なんか痛い…