第15章 サロメ
「なんでこんなことしたの?」
「…役作り」
「え?」
「今度、舞台やることになった」
「まじで!?」
「グローブ座だよ」
「どんな役?」
「愛ゆえに…ううん…愛ってなにかわからないから、愛する人を殺す役」
「な、なんだそれ…」
「さあね…わかんない」
和也はサロメの絵を見上げた。
「なんか、彼女と似てるなって思ったんだよ」
「サロメと?」
「うん。サロメの場合は、まだ女性として成熟してないって部分とか。あと、母親と叔父の不義とか…そういうのが受け入れらんないんだろうなっていうのはあるんだけど」
手を口に当てた。
「愛ってもんが、わかってないんじゃないかってね」
じっと俺を見た。
「ま、あんたにはわかんないだろうけどね」
「女心なんかわかってたまるか」
ふふっと笑って和也はまた、絵を見上げた。
「わかんねえなぁ…今回の役」
和也は腕を俺の腹に回しかけた。
「俺、こんなに愛溢れる人間なのに。なんでこんな役、当てられんだろ」
「向いてるからじゃね?」
「え?」
「和也はいつも、愛に飢えてそうな顔してるもん」