第15章 サロメ
和也の目が冷たい。
ぐうっと押されると、息ができなくなる。
「う…」
和也の手をどけようとしたけど、動かない。
「やめろ…」
力任せに和也の腕を引っ張った。
「じょ…冗談にも程があるだろ…」
少しむせながら喋ると、ごほごほが止まらない。
「…ごめん…」
でも、声は笑ってて…
「マジで…なにしてんの?」
「ん…?だからごめんて言ってるじゃない‥」
「ほんと、なんかムカついてんならそう言えよ」
「別にムカついてなんかないよ」
「じゃあなんでこんなことするんだよ!」
「智が好きだから」
真っ直ぐな視線を向けて、言い切られた。
「う……ならいい…」
がくっと和也が崩れた。
「いいのかよ!?」
「だって…好きだからだろ?」
「なんでだよ!苦しかっただろ?」
「和也なら…いい」
「え?」
「お前になら殺されてもいいもん」
「ばっ…」
やっと和也が和也に戻った。
顔を真っ赤にしながら、そっぽを向いてしまった。
「…うもー…おばかなんだから…」
バタンとベッドに倒れこんだ。
「ほんとアンタと居ると調子狂うわ…」