第15章 サロメ
「ね…智…」
「ん…?」
「サロメはなんで、ヨカーナンの首を欲しがったんだと思う?」
「え…難しいこと聞くなよ…」
「単純にさ、自分にキスしなくてムカついたから殺してやるってことじゃないじゃん?」
「女心なんてわかんねーよ…しかも外人だし…」
「じゃ、ヨカーナンはなんでサロメにキスしなかったのかな?」
「聖職者だからだろ?」
「そうかな…ヨカーナンは…俺たちだったんじゃないかな…」
「え?」
「サロメって絶世の美女だったんだって」
「うん」
「普通の男ならさ…しちゃうでしょ…いくら聖職者でもさ」
「…俺たちゲイじゃねえぞ」
「あのサロメの踊るシーン…素っ裸になるじゃん?」
「おお…」
「あれもさ、本当はヘロデ王に見せるためじゃなくて、ヨカーナンに見せるためだったんじゃないかな…」
「お前今、誰目線で喋ってんだよ」
頭がこんがらがってきた。
「サロメだよ」
くすくす笑うと、天井に向かって腕を突き出した。
「ヨカーナン…お前の首が欲しい」
手を下ろすと、そっと首に手を這わせてきた。
「智…」
和也が起き上がる。
ぐっと俺の首の上にあった手に力が入った。