第5章 グリーンフィンガー
たった数ヶ月ニノと暮らした。
相葉ちゃんなんてつい最近だ。
そして別にがっつり住んでるわけじゃない。
なのに。
人と暮らすのがこんなに楽しいものだなんて知らなかった。
家族とはまた違った楽しさがあった。
じっと空を見上げてると、ちょっと涙が滲んだ。
俺、こんな弱気だっけ?
なんとなく気弱になった気がする。
楠をみあげた。
まっくらな枝組が見える。
その向こうの夜空は全く見えない。
今の俺みたいだ。
俺の本心は隠されて見えない。
本当は…
「大野さん」
顔を上げると、ニノが立ってた。
「風邪ひくから、戻ろ?」
そういうとほんのりと笑った。
「うん…」
ニノが手を差し出したから、握った。
いつもと逆だ。
そのままニノは俺の手を引いた。
俺はニノに吸い寄せられるように近づいた。
唇が重なった。
ニノの両手が俺の頬を包んだ。
手が、震えていた。
俺は思わずニノの腰を抱き寄せた。
そのまま、俺達は動けなくなった。
唇だけが熱を持って合わさってた。
しばらく、俺達はそこで一つの影になってた。
三日月だけが、俺達を見てた。