第5章 グリーンフィンガー
ある日、夜中に起きて眠れなくなった。
春先のまだ肌寒い中、俺はジャケットを羽織って庭に出た。
勝手口からそっと出ると、綺麗な三日月が見えた。
庭はほぼ出来上がりつつあった。
楠とベンチを中心に緑が植えられた。
温室に続く道ができた。
その道の両脇にはこんもりと植物が植えられた。
裏口と蔵に続く道もきちんと出来た。
あ、車庫も完成しつつある。
車庫の中から家に入れるよう、裏にあった窓を少しぶち破ってドアをつけたそうだ…
だから、どんどん誰んちかわかんなくなるだろ…
俺、もう免許取る気ないのに…
どうすんだろ。将来。
ここで一人になったら…
一人…
そんな日がくるのかな…
そりゃ、ニノや相葉ちゃんが結婚したらこの家なんて用はなくなるし…
ベンチに座った。
ぼけっと空を見上げた。
スエットじゃまだ寒いな…
ジャケットを引き寄せる。
ばあちゃん…よく60年も耐えたな…
淋しくなかったのかな…
もしこの家で一人になったらどうしようって考えから俺は抜け出せなくなった。
孤独に胸が締め付けられた。
俺には止める権利なんてない。
いつかは、ニノだって相葉ちゃんだっていなくなるんだ…
この家から…