第12章 空翔ける
次の朝おきたら、もう翔ちゃんはいなくて…
ああ…相変わらずだな…ほんと。
休みの日くらい、ゆっくりすればいいのに…
台所に行ったら、和也がご飯食べてて。
給仕してるのは影山スタイルの翔ちゃんだった。
「おはようございます、おぼっちゃん」
「ぶっ…な、なにしてんの!?」
「いいでしょ~?影山に朝食用意してもらってんの!」
和也が得意気に笑う。
「いや、そら羨ましいけどさ…どうなってんの?」
「え?俺の見てないところで、智とキスしたからお詫びだってさ」
「ぶっ…」
「…和也ぼっちゃんと約束したのに…申し訳ございません」
「影山、あなたの目は節穴ね…」
和也が、お嬢様の真似をする。
「この男はね、きっとこれから私の見ていないところで、こそこそするに決まってるわ…」
「ちょっ…和也っ!」
「だから、私、許すわ」
「へ?」
「もう、ここに棲んでいるひとなら、許す…」
ふわっとない髪をかきあげた。
「じゃないと、身がもたないワ…」
そう言うと立ちあがって、ダイニングを出て行った。
「て、ことだからさ。翔さん、きにしないでよ…」
最後の声は、和也の声だった。