第9章 FREEDOM
「俺…わかってたんだ…」
和也が俺から身体を離して、歩き出す。
「皆、智のこと愛してて…でも、どうしても俺だけのものにしたかった…」
振り返ると、ふわっと笑った。
「だから…抜け駆けしちゃった」
暫く、そのまま見つめ合った。
「でもね…あなたが皆のこと、好きなのもわかってたんだ…」
「えっ…?」
俺ですらわかってなかったのに?
「わかるよ…だって、ずっと好きだったんだから…」
「まじか…」
ふ、と笑うとまた前をみた。
「俺だけのあなたにしたかったけど…でも…俺もね…みんなが大事なの」
月を見上げた。
「皆が居たから、今の俺が居るの。だから…だからさ…もう…」
声が詰まった。
そのまま俯いてしまった和也を静かに待つ。
涙がぽたりと地面に落ちた。
月から零れた雫みたいに綺麗だった…
「和也が…一番だから…それは、ずっと変わらないから…」
何を言っても、軽いのかもしれない。
でも、俺は難しい言葉は知らなくて。
こうやって言葉を繋げていくしかできなくて。
「皆のこと、大事だけど…和也のことは、俺にとって…」
手を伸ばして、抱き寄せる。
「特別だから…」